※ネタバレあり アンモナイトの目覚め 感想

 

最近ようやく洋画に触れるようになった私が、このアンモナイトの目覚め」を観て、さらに洋画の良さに気付いた話をしたい。

この作品は、私の人生の中で大事なものの一つとなった。

 

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アンモナイトの目覚め : 作品情報 - 映画.comより

 

 

19世紀のイギリス、貧しい生活のため発掘した化石を販売して生活をしていたメアリー・アニング。

彼女は海辺の町ライム・レジスの荒波が打ち付ける海岸で観光用のアンモナイトを掘り出し生計を立てている。

 

そんな彼女はある日、裕福な化石収集家の妻シャーロットをうちに預かることに。メアリーとシャーロット、相反する性格である2人だが、だんだんと互いに惹かれあってゆく.....

 

 

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目次

 

 

●メアリー・アニングという人物

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映画『アンモナイトの目覚め』 公式サイトより

 

1799年5月21日にイギリス南西部のライム・レジスに生まれる。

貧しい家庭で育った彼女だったが、父に教わった化石発掘でわずか13歳の時にイクチオサウルスの全身化石を発掘する。小さいながら貧しさのため学校に行けなくなったメアリーはその化石発掘で家計を支えるのだ。

その後もさまざまな化石を発掘するも女性でかつ労働者階級であるが故に論文発表も学会入会も認められなかった。この場面からも当時の男性優位社会や階級社会が根強かったのが窺える。

 

 

人嫌いで世間とのつながりを絶ち海岸でひたすら化石を発掘する日々。そんなところにシャーロットというひとりの女性がメアリーの人生に現れ、どこか鬱屈とし疲れ切っていたその表情が柔らかく変化していく様子にも注目して見てほしい。

 

 

●シャーロット・マーチソン

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映画『アンモナイトの目覚め』 公式サイトより

裕福な化石収集家の妻、シャーロット。彼女は身籠った自分の子を死産してしまいうつ病を患う。何を見ても何をしても心が動かず死んだような顔をして生きていた。そんなある日シャーロットは高熱を出し、つきっきりでメアリーに看病してもらう。そこから2人の関係はゆるやかに進んでいくのだ。

 

夫のロデリック

そんな心がすっかり落ち込んだシャーロットに夫のロデリックは、以前のような賢くて快活な妻に戻って欲しいと言う。食事に行った際も彼女の食べる料理を指定し意見は聞かない。この時代は特に、女は男に従属的であるものだとされていたことが窺える。さらに夫は妻をメアリーの元に預けて世話をして欲しいと頼む。そして数週間後にそろそろ帰っておいで〜と手紙を寄越すシーンなんかこの人は勝手だなぁと思わされた。

 

●映像と音の美しさ

 

この映画は全体を通してセリフが少ない。

だからこそ役者の表情から取れる感情の機微、岩肌に波打つ荒い海の音、愛を確かめ合う時の息づかいなどが際立つ。

 

曇天の中、不安になるような音を立てて波打つ海、色で例えると青白磁をもう少し暗くしたような雰囲気であったように感じた。→青白磁(せいはくじ)とは?:伝統色のいろは

 

実際に監督も音にこだわりを持って撮影したとインタビューを受けているので気になった人は公式ホームページをチェックして欲しい。

 

●ボディダブル無しでの撮影

まずボディダブルとは、

映画やテレビドラマなどの主要な出演者がなんらかの理由によりあるシーンを演じることができない場合に、替え玉となって、あたかもその出演者が演じているかのように演技をする俳優のこと。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%80%E3%83%96%E3%83%AB (Wikipediaより)

 

つまり替え玉は一切無しで、ピアノを弾くシーンも化石を発掘するシーンも海に飛び込むシーンも俳優自身できっちりリハーサルを行い演技をしたのだ。そのことが演じる上でより効果的に自然さを出すことができたり、あたかもそこに本当に生きているかのような演じ方ができたのではないかと思う。

 

●シーン別に見る好きなところ

 

①いつかメアリーに石炭を運ぶことを頼まれたシャーロットが、自分はひとりでも生きていけず何もできないという無力さを痛感して泣き崩れるシーンがあるが、そこに寄り添うメアリーも含めて見ていただきたい。

 

 

②「good night」とおやすみの挨拶をして頬にキスしようとするシャーロット。ちょうどメアリーがシャーロットの方を向いて口同士が当たってしまいそうになる。そこから、どちらからともなく唇同士にキスをするシーンは心がぎゅっとなった。

 

③シャーロットは針網の刺繍のようなものをつくりメアリーに渡す。刺繍されているのは紫のすみれの花。紫のすみれの花言葉は「愛」なのをのちに知って悶える。

 

 


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https://instagram.com/ammonite_japan?igshid=x2l0r4rtzjceより

 

●劇中でのメアリー

彼女は実在した人物であるが、同性愛者であるとの事実は無い。だがこの作品では、シャーロットに惹かれていく様が描かれている。

 

監督のフランシス・リーによると、

「...彼女に相応しい、敬意のある、平等な関係を与えたかった。メアリーが同性と恋愛関係を持っていたかもしれないと示唆するのは、自然な流れのように感じられたんだ。そのうえで社会的にも地理的にも孤立し完全に心を閉ざしてきた女性が、人を愛し、愛されるために心を開き、無防備になることがどれだけ大変かを描きたかった。...」(公式サイトより一部抜粋) https://gaga.ne.jp/ammonite/

との誕生秘話を語っている。

 

誰かが誰かに想いを寄せる、好きになる、関係を持つ、持たない、すべて日常的にそこかしこで起きていることなのである。もちろん人に対して恋愛的な好意を持たない人もいる。この作品では様々ある関係の中でただ女性同士が惹かれあい気持ちが動いていく様を描いているだけに過ぎない。同性愛というその関係が強調されることもなく女性が生きていく様子を映し出しているところが良かった。

 

●物語の終わりと日常

大英博物館で自分の発掘した化石を隔ててお互いを見つめる結末、何か原因を解決して平和で終わり、ではない終わり方。彼女たちの関係が完全には修復することなく、これからも彼女たちの日常は続くことを示唆する終わりは、物語として見た時に私にとっては新鮮だった。

 

だが日常というものはそういうものだと気付くきっかけにもなった。何か自分に劇的な変化が起きたり、約2時間で収まりよく全ての問題が解決するとは限らない。我々の生きている日常は淡々とそこに横たわっている。彼女たちも、ただそこで生きている。

 

 

私はこの作品が好きだ。ここで生きる彼女たちが好きだ。だからもう一度観に行って彼女たちの人生のほんの一部をもう一度見届けたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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